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2006年6月 4日 (日)

ヌーダ・ヴェリタスー裸の真実

246pxtruthジュール・ジョゼフ・ルフェーブル(Jules Joseph Lefebvre)の「真実」(1870年)はオルセー美術館に所蔵されています。「真実」、「正義」、「平和」という寓意を持っているこの作品。

減少している「前近代的」な寓意像だということです。 (千足伸行著より引用)

真実は闇を照らす光。それに対しクリムトの「裸の真実」はユーゲントシュテールらしくファムファタル的です。どちらも古来鏡を手にしています。

ジュール・ジョゼフ・ルフェーブルの「真実」が天からの思し召しで導かれるのでしょうか。

それに対して、クリムトは「真実は大地から萌え出る」(聖書詩篇85:12)ように、いずれ明らかになるだろうという寓意。

Klimt27『私の自画像はない。絵の対象としては自分自身に興味がない。むしろ他人、特に女性、そして他の色々な現象に興味が有るのだ。』

19世紀末のウィーンは宮廷文化が華やかに咲き誇っていた時代で、ハプスブルク家のお膝元でした。皇帝フランツ・ヨーゼフⅠ世と皇后エリザベートの銀婚式を祝う装飾を引き受けた伝統的バロックのハンス・マカルトでした。助手だったのが、17歳のグスタフ・クリムト。マカルトの「新たな色」、「裸婦」、「装飾の天分」、「女性の肖像への活力」という影響が、人の心に宿る官能性と欲望を絢爛豪華の象徴でもある金箔を用い、官能美で描き、装飾美をほどこし、華麗で魅惑的で恍惚とした世界を表現したのです。

クリムトは、思想表現を目指し、そして東西文化の融合美を描きます。古代エジプトの壁画、黒像式、赤像式などがあるギリシア陶器画や中世の金地板絵、ビザンティンのモザイクの要素を取り入れ、日本の浮世絵や淋派などを思わせる作風から、究極の美、生と死に輪廻、喜び、悲劇をエロティックでスキャンダラスな画風で表現したのです。

この絵はクリムトの女性像のひとつである「Nude Veritas」です。

足元には医学を象徴ともされている蛇が描かれていますが、ここでは大罪と嫉妬の象徴である蛇として描かれています。

BOOk Klimt (作品 「アデーレ・ブロッホ・バウアーI」が表紙です)
エジプトの女神 『 イシス 』 が、その右手に真理を照らす鏡を持ち、足元の蛇は不吉なものと描かれていますが、芽生えている生命力豊かなタンポポが、この女神の勝利を表しているのですね。

さらに銘文にはシラーの言葉、「万人に好まれようとすることは罪悪である」が刻まれています。

汝、真実を照らす鏡を持ち、立ち上がれ。
欺瞞の野にありても臆することなく、虚飾の衣を脱ぎ捨てよ。
美しき花の種子は、今まさに野に散らんとす。

ちなみに「Nude Veritas」は同人誌「ヴェル・サクルム 聖なる春」の挿絵として描かれたものもあります。

さて、日本の浮世絵や淋派などを思わせる作風と記しましたが、クリムト本人が「琳派」を知っていたか、いつ触れて、あるいは触れなかったのかもしれませんが、日本側から「琳派的作品」をさす西洋絵画のひとつに、クリムトの作品があるようです。

写真絵巻 描かれたギリシア神話/青柳 正規, 平山 東子, 小川 忠博写真絵巻 描かれたギリシア神話
高貴な神々や英雄の物語を解き明かすだけではなく、世俗社会も知ることができます。クリムトの絵画の要素のひとつである「ギリシア陶器画」から展開されています。

追記 ↑のBOOK KLIMT の表紙である作品の「アデーレ・ブロッホ・バウアーI」ですが、このたび絵画のなかで至上最高の価格で売却されました。約155億円です。これまでのピカソの「パイプをもつ少年」を上回りました。詳しくはこちらの記事からどうぞ。

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