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2006年7月28日 (金)

絵手鑑の内蓮池に蛙図-蓮と睡蓮

酒井抱一 筆 『絵手鑑の内蓮池に蛙図』  ちなみに静嘉堂文庫美術館では、収蔵作品の多くを絵はがきにしています。 実はSAIが、抱一の『絵手鑑の内蓮池に蛙図』のポストカ ードを手にしているときに、奥方が、「まぁ、蛙に睡蓮ね。」とおっしゃた。

こちらが伊藤若冲の『玄圃瑶華』から図様を倣い、抱一独自の構図や筆致に、彩色もされています。蛙のお腹や脚、そして蓮の葉の葉脈には金が用いられていますね。ただ蓮の特徴である茎はなく、なんだか葉にも切れ目がある。


睡蓮は、江戸時代には育成されていなかったと思われます。「梅園草木花譜」や「東莠南畝讖」などの江戸時代の博物誌には、蓮しか描かれていません。当時、人気のなかった薔薇も、小さくメインの花の下にそっと描かれているだけですが、睡蓮という名は、どこにもありません。


www:pdase.com_copy これは「蓮」ですね。

茎が長く、ま~るい葉は、たいてい水面からすっと姿を現します。

よくみると葉に真珠のような水滴がコロコロとあります。

これが「蓮」のアイディンティティ。

でも茎が短いもの、水面に葉が浮かんでいる蓮もありますよね。 www:pdase.com_copy


さて、睡蓮はというと、単純にお話すれば水面から茎をださずに、滴のない葉には切れめがあり、お顔だけを見せてくれます。でも、茎をのぞかせることもあるんですね。


睡蓮は森や泉や山にすむ精霊Nymph(ニンフ)が語源で Nymphaea(ニンファエア)といいます。 こちらがその睡蓮。葉に切り込みがありますね。これが睡蓮のIDです。

抱一の『絵手鑑の内蓮池に蛙図』と比べると良く似ていますが、実は睡蓮は、大正時代に育成がはじまった植物なので、この時代には原種である「未草」といいました。


プライスコレクションの中野其明「蓮図小襖」は、まぎれもなく「蓮」の特徴が描かれています。


この渡来した睡蓮ではなく、日本に自生していた未草。江戸時代から明治6年までの時の呼び名である未の刻から、「未草」とよばれたといいます。ということは、抱一の描いた「蓮池」に蛙図は蓮池に咲いた未草という可能性があるということですね。蓮池と蛙であって、花の名前をタイトルにしているわけではないですもんね。


古代蓮

万葉時代から蓮があったといいますが、こちらは「古代蓮」といわれる2000年前の縄文遺跡から出土した種子で、1951年に種が発見されました。蓮の地下茎である蓮根は、江戸時代にも味わうことができたようです。この古代蓮、葉に切れ目がありますが、自然の戯れで、しぜんに葉が裂けてしまったのでしょう。

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コメント

蓮と睡蓮って違うもんなのー、とつれあいに訊いてしまった私です。
大島弓子の「夢虫、未草」の未草とは、かような物であったのか、と初めて知った私です。

投稿: とーし | 2006年7月28日 (金) 20時08分

とーしさん、こんばんわ。絵をみるときって、人それぞれちがうんだと、あらためて思いました。私って、好き・嫌いが第1印象なんですね。画家の名前は記憶にあるけれど、作品名はスーッと消えちゃう。だからSAIからこの話を聞いたときも、鈍かったんですよ。(笑)

以前に、モネの睡蓮を記事にして、蓮と睡蓮の違いをしっかり記憶していたので、蓮池に・・・とあるのに蓮より睡蓮みたいだなぁと。

大島弓子の「夢虫、未草」も、スーッと消えちゃってます・・・。

と、いま大島弓子選集をもってきました!朝日ソノラマの10巻、P107にありました!

ちょっと切ない話ですね。これを読んだときは、「林子ちゃん」のほうに近い年齢だったのでしょう。かれこれ「お母さん」の年齢を超えてしまいました。

大島弓子の物語は、決して「ハッピーエンド」とは限らない。そして主人公はいつも「境界線」のうえを行ったり来たりするような女の子。余韻が残りますねぇ。

タイトルの夢虫は寂しい夢かな?未草は・・・。お母さんが、お父さんの好きな女性の御子に、金糸卵の五目寿司をもって、草のなかを歩く姿が浮かび上がっているシーンがあります。なにかそこに未草の花を見たような気になりました。

投稿: KAFKA | 2006年7月30日 (日) 23時22分

KAFKAさんも大島弓子好きでしたか。
私だってタイトルと内容が一致しないので、同じ本の107ページから読み返しました。くぅー、切ない。娘を見送ったつもりの父親を見送る娘とかね。
あれほどの良質なノスタルジックなシーンを何故にああも次から次へと繰り出せるのでしょうね。
彼女ほど大人はいない。
これ、今回私が思いついた彼女のキャッチフレーズです。
とびぬけて大人。それが、あれらの綺羅星のごとき作品群を生みだした源かなと思惟いたしましたです、はい。

投稿: とーし | 2006年8月 1日 (火) 19時18分

とーしさん、こんばんわ。

キャッチフレーズの「彼女ほど大人はいない。」、「とびぬけて大人」、ぴったりですね。

少女漫画界を、わたなべまさこ世代のグループ、一条ゆかり世代グループ、陸奥A子世代のグループ、そのつぎあたりに来るのではないでしょうか。一条世代の萩尾もとの同性愛や、陸奥A子のメルヘンを、大島流に表現していますね。かならず、退廃的な女の子、大人びた少女も登場し、達観した少女たちが、大島本人の「とびぬけて大人」の要素を含んでいるようです。

そうだ、山岸涼子もよかったなぁ。アラベスク。

投稿: KAFKA | 2006年8月 5日 (土) 00時31分

わたなべまさこの絵柄気味悪くって駄目だったなあ。
他のお挙げになった人達と大島は同世代と思います。
90年代初め頃までは、少女漫画追っていたのですが、もう追いきれなくなりました。

ポーの一族から訪問者辺りまで私、萩尾望都命 ! でしたねえ。何度、読み返していることか !
山岸涼子、妖精王の頃面白く読んでました。絵柄にもお話にも畏怖を感じさせる作家ですね。話題になった日出処の天子は私、ちょいと駄目でしたが。
大島弓子は、初期のものから最近のものまで、どれも素晴らしいです。ジヤンルを越えて輝かしい 稀有な作家ですねぇ。漱石のごとく、ビートルズのごとく、エルンストのごとく。敬愛しております。

投稿: とーし | 2006年8月 5日 (土) 10時51分

とーしさん、こんばんわ。

日出処の天子ダメでしたか。あの仏の顔や魑魅魍魎の絵が好きでしたよ~。

小学校1年生のときに、ちょうど「なかよし」で、へび少女「たまみ」におびえ、「リリとナナ(記憶が定かでないです)」という漫画に夢中でした。

中学から高校生は「くらもちふさこ」です。そのころに大島弓子の綿の国星を読んだような記憶。人間なんだと自分に言い聞かせるような「ちび猫」がだんだんと、「猫」という生き方を覚えていく。

萩尾望都は、「11人いる」も面白かった。
「ポーの一族」で、「つぐみ」の詩から、マザーグースに興味をもったものでした。少女漫画のレイ・ブラッドべりと思っているほどです。(笑)

わたなべまさこの少女の描き方から、一条ゆかりの作品からは、少女漫画界は性を正面から描くようになり、陸奥系はほのぼのメルヘンでしたね。そしていまは、トレンディドラマタッチですね。

投稿: KAFKA | 2006年8月 5日 (土) 21時52分

日出処の天使の連載表紙の絵など、いつもいいなと感心してました。素晴らしいな、とは思っていました。
ただ、あらためて考えてみると、あの人の絵は、100年の時を隔てて江戸と直接つながっているかのような趣きが有りますね。横山大xから加山又xへのラインよりも,日本画の正統な継承者になりえたかも、とチラッと思いました。

ところで、初期の坂田靖子のドタバタコメディ、愛している私です。

投稿: とーし | 2006年8月 6日 (日) 21時28分

とーしさん。

>100年の時を隔てて江戸と直接つながっているかのような趣き
とーしさんもそう思っていましたか!kafkaもです。日本画家としての道もあるのかなぁ。なんて山岸涼子さんをみていました。

>初期の坂田靖子のドタバタコメディ、愛している私です。
坂田靖子さん・・・すぐに思い出せない。ちょっとネット検索を・・・。

「花とゆめ」に、再婚狂騒曲でデビュー。この絵確かに記憶あり!でもストーリが思い出せません・・・。ちょっとお勉強します。

サカタBOX
http://www2u.biglobe.ne.jp/~ysakata/
坂田靖子 Data Base http://homepage2.nifty.com/~haneusagi/sakata/

投稿: kafka | 2006年8月12日 (土) 16時23分

くどくて申し訳ない気もするのですが、折角の少女まんがの話題なので、書かせていただきます。

坂田靖子、私がはまってしまったのは、何と言っても「D斑レポート」でした。
かつての、ハリウッドの上質なドタバタコメディを彷彿とさせる素晴らしいセンスと、坂田靖子ならではと言いたいポッブなストーリー・テリングぶりに夢中になりました。

でもKafkaさん、きっと読んでるんじゃないかなぁ。

投稿: とーし | 2006年8月13日 (日) 21時53分

>何と言っても「D斑レポート」

古本屋さんに探しに行ってきたんですよ!でもないんです。近所の地下鉄駅1件、街中1件、駅前1件と3件行ってみましたが、坂田靖子さんの漫画がない!

とーしさんのお話から、だんだん読みたくなって(ホント、記憶にないんですから)、いてもたってもいられず。(笑)

1978年~1980年連載の-ぼくらは優等生「D斑レポート」-は、ネット検索で白泉社というのは判明。

しかも古本オークションで初版が¥1320、ちなみに、大島弓子の夢幻の館 めるへんめーかー傑作集 白泉社 (初版) は、¥300だったです。(笑)

今週末中くらいから名古屋へ出張なんですが、関西方面も探してみようかな?

投稿: kafka | 2006年8月21日 (月) 11時29分

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