2006年8月 8日 (火)

酒井抱一のボタニカルアート

酒井抱一 木版画

酒井抱一 図案画  酒井抱一 図案画

酒井抱一 図案画  酒井抱一 図案画

四季の花(木版画・大正3年刊)の新装版、四季の花 (上巻) / 四季の花 (下巻)は、酒井抱一、鈴木其一、中野其明により描かれた草花図。絵画としてみるだけではなく、博物誌として見ることができるのが特徴です。詳細はこちらより 上巻(春夏編)下巻(秋冬編)拝見できますよ。

上の四図は、抱一の木版画です。おなじ図柄が「四季の花」に掲載されている可能性がありそう。左上から、マグノリア、柿(どんぐりも描かれてますね)、左下は百合、そして蓮です。

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2006年7月28日 (金)

絵手鑑の内蓮池に蛙図-蓮と睡蓮

酒井抱一 筆 『絵手鑑の内蓮池に蛙図』  ちなみに静嘉堂文庫美術館では、収蔵作品の多くを絵はがきにしています。 実はSAIが、抱一の『絵手鑑の内蓮池に蛙図』のポストカ ードを手にしているときに、奥方が、「まぁ、蛙に睡蓮ね。」とおっしゃた。

こちらが伊藤若冲の『玄圃瑶華』から図様を倣い、抱一独自の構図や筆致に、彩色もされています。蛙のお腹や脚、そして蓮の葉の葉脈には金が用いられていますね。ただ蓮の特徴である茎はなく、なんだか葉にも切れ目がある。


睡蓮は、江戸時代には育成されていなかったと思われます。「梅園草木花譜」や「東莠南畝讖」などの江戸時代の博物誌には、蓮しか描かれていません。当時、人気のなかった薔薇も、小さくメインの花の下にそっと描かれているだけですが、睡蓮という名は、どこにもありません。


www:pdase.com_copy これは「蓮」ですね。

茎が長く、ま~るい葉は、たいてい水面からすっと姿を現します。

よくみると葉に真珠のような水滴がコロコロとあります。

これが「蓮」のアイディンティティ。

でも茎が短いもの、水面に葉が浮かんでいる蓮もありますよね。 www:pdase.com_copy


さて、睡蓮はというと、単純にお話すれば水面から茎をださずに、滴のない葉には切れめがあり、お顔だけを見せてくれます。でも、茎をのぞかせることもあるんですね。


睡蓮は森や泉や山にすむ精霊Nymph(ニンフ)が語源で Nymphaea(ニンファエア)といいます。 こちらがその睡蓮。葉に切り込みがありますね。これが睡蓮のIDです。

抱一の『絵手鑑の内蓮池に蛙図』と比べると良く似ていますが、実は睡蓮は、大正時代に育成がはじまった植物なので、この時代には原種である「未草」といいました。


プライスコレクションの中野其明「蓮図小襖」は、まぎれもなく「蓮」の特徴が描かれています。


この渡来した睡蓮ではなく、日本に自生していた未草。江戸時代から明治6年までの時の呼び名である未の刻から、「未草」とよばれたといいます。ということは、抱一の描いた「蓮池」に蛙図は蓮池に咲いた未草という可能性があるということですね。蓮池と蛙であって、花の名前をタイトルにしているわけではないですもんね。


古代蓮

万葉時代から蓮があったといいますが、こちらは「古代蓮」といわれる2000年前の縄文遺跡から出土した種子で、1951年に種が発見されました。蓮の地下茎である蓮根は、江戸時代にも味わうことができたようです。この古代蓮、葉に切れ目がありますが、自然の戯れで、しぜんに葉が裂けてしまったのでしょう。

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