杉浦非水
日本のアールヌーヴォーの時代に活躍した杉浦非水(1876 - 1965 本名 朝武・つとむ)の作品で、1922年の「山葡萄」だったと思います。東京国立近代美術館所蔵のはずなんですが、いまは検索できない状態です。神坂雪佳(慶応2~ 昭和17/1866~1942)も同時期に活躍していますね。パリ万博は、渡仏した洋画家の浅井忠をはじめ、藤島武二、板谷波山、橋口五葉、武田五一、藤井達吉らに、そして杉浦非水も、大きな衝撃と影響を受けて、作品にその様式を取り入れていきます。
画家、図案家、工芸家、建築家たちの技巧を重視した「職人主義」から、「創作性」というものへの表現に取り組むようになります。
杉浦非水の作品に 「中学世界 絵葉書 博文館」と記された、 1906年の明治時代の作品とありました。モーヴフラワーというらしいです。三越のポスター、絵葉書にも、このような女性の図柄がいくつかあります。「美人画」となるのでしょうか。モーヴは、薄い灰色・青みを帯びた紫です。英国の Perkin によって 1856年に最初の塩基性染料の Mauve が 発明されたのです。
いわゆる合成染料のこと。アンティーク調の色彩は、服飾のほかに化粧品の色としても用いられています。とても好きな色なのですが、年齢とともに「くすみ」が強調されやすい、たいへん微妙で憧れの色ですね。
さてこの作品は、 ミュシャ風の女性の表情もさることながら、ヨーロッパの「色」も強調されているのです。
こちらの図案は、以前の記事「花 蝶 図案集」で、『非水百花譜』20集を紹介した、その中のひとつ「蓮」です。
先の「山葡萄」も非水百花譜に収められている作品です。
日本的な姿をしながら、西洋の図柄に負けない堂々と描かれています。
模倣ではない日本独自という日本のアールヌーヴォーです。
私個人の感じることは、「創作性」ではなく、「意外性」へと発展してしまったのではと。私個人の感じることとは、芸術という専門家ではない素人個人の感覚ですからね。つまり、芸術という領域では、観る側の大衆のなかの一人だということで。そのなかで、非水は、巧く使いわけをこなしている。
非水の作品は、すべてアールヌーヴォー調ではありません。
装丁本、地下鉄や百貨店、たばこのポスターやラベル、美人画のほか、非水独自の作風である「秋の川」、「遊泳」のポストカード、社会や政治背景が見えるポストカードなど、作風もさまざまです。大正時代にはアール・デコへと作風は変化していきます。図案集には、ブック・レトロスタイル 1~3巻もあり、皆さんの好きな1枚が必ずあると思います。
>手炙りの灰を片付けていた時に
なんと風情のある。
JUGEM BLOG 「MY FIRST JUGEM」さんの「骨董品」の記事から引用させていただきました。
なんと、杉浦非水デザインの昭和7年~昭和20年頃に販売されていた煙草が、「手炙りの灰を片付けていた時に」、顔をだしたそうなんです。写真が掲載されています。
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