フランスの画家ロベール・ドローネーの肖像画は、妻ソニアの作品です。
とーしさんが教えてくれたドローネーですが、ようやくお披露目したい作品が集まったということなんです。
ちょっと話しが遠回りになります。
先日、SAIから借りた「テクストの快楽」なんですが、テクストのみならず、ペインティングにも思い当たる文章がありました。
いま、手元にないので、うろ覚えです。
「古典的な物語(ゾラ、ディケンズ、トルストイなど)は、知りたい一心で斜め読みやとばして読むことがあっても、読むたびに決して同じ箇所はとばさない。」(要約:ロラン・バルト「テクストの快楽」より)
そうなんですよね。物語だけではなく絵画作品もそうなんです。
そのときにその作品は見落としても、あとで見落とさないんですよ。
要所、要所の要にあたる作品は、ギヨーム・アポリネールがドローネーの作品を「オルフィスム」と呼び、はやくにキュビズムを脱するドローネーですが、モノクロームに近いキュビズムに比べ、カラー配色の特徴を持っているところが「違う」という印象を与えます。そういう要素の要の作品でもあるのでは。
この代表作が格好の例。日本、フランス、英国も、この作品が代表作であることに見落としがないからです。
作品カーディフ・チーム、パリ市も、一見して同じように見えますが、描き方が違っていますよね。彼の好んだ飛行機(エッフェル塔も好んで描いています。)が描かれて、それが機械時代といわれています。英仏海峡を初横断した飛行士ブレリオへの献辞が書き込まれたこの「ブレリオに捧ぐ(Hommage à Blériot)」(1914年)は、格好の代表作になるわけです。
レオナルドならモナリザ、最後の晩餐というように。
ところが、1枚の作品を見落とさなくとも、その作品の表情の一部を見落とすこともあるわけです。
日本のドローネーの紹介に多いのは、キュビズムなら「パリ市」(1912)、機械の時代として、「ブレリオに捧ぐ」、シュルレアリスムやダダイスムでは「エッフェル塔」(1920)の再開。さらに1930年には抽象画の再開で「リズム」の連作があります。
それで、ロベール・ドローネー(Robert Delaunay)のなかで、kafka が好きな作品が次になります。
読書する裸婦 1915この裸婦の後姿は、フランツ・マルクの「青い馬」を想像しちゃいます。
KAFKA 過去記事 フランツ・マルク
何の印象もないblog フランツ・マルク
このフランツ・マルクとともに「青騎士」のメンバーだったマッケにロベールは手紙を書いています。1912年のことです。
下記のリンク先から右側の「太陽と月」(1912年から13年)の作品とマルクの友人アウグスト・マッケ宛のロベールの手紙を見ることができます。翻訳時間がかかるのでパスしました。
Robert Delaunay, letter to August Macke, 1912
左は「複数の円盤」(1930-33)です。MoMAに所蔵されているようです。リンク先でごらんください。
MoMA Robert Delaunay. (French, 1885-1941) 13 of 13
静物画 赤い絨毯 1936この 赤い絨毯 がケープにみえ、まるで女性の後ろ姿にも見えてしまいます。赤い絨毯はテーブルクロスにもみえ、テーブルにプレートが並んでいるようにも見えました。
読書する裸婦(1920)は、シュルレアリスムやダダイスム期では、こんな風に描かれています。
さて、やはり絵画活動だけではなく、ロベールとソニアは、テキスタイルのデザインも手がけています。この配色によく似た昆虫のデザインもあります。
このファブリックのデザインが二人によるものです。まだ他にもありますが、ウィリアム・モリスのテキスタイルデザインなどの著作もあるらしい、プリントデザイナーE.A. Seguy のモチーフ集に紹介されています。
E.A. Seguy の花、蝶々や昆虫(ボタニカルアート)も素敵ですよ。この人の本は二ヶ国語しか翻訳されていないようです。
下の写真はソニアがクレオパトラに扮しているものですが、このコスチュームはロベールによるもの。1917年の作品。
まるで、ダリとガラのような夫妻です。ソニアとロベールの夫妻コラボはいくつかあるようです。
ソニアとロベールはバレエなどのデコール、舞台衣装をデザインするなど(ピカソやシャネルも)多才です。写真のコスチュームはセルゲイ・ディアギレフのロシア・バレエ団(バレエ・リュス)「クレオパトラ」のために。
たぶん1908年初演の「ある夜のクレオパトラ」(原作テオフィール・ゴーティエの短編)と同じだと思います。
とくにソニアはファッション、インテリアにも手をひろげています。ロベールの「シミュルタニズム」の色彩理論を用いた作品。それは車のボディにも家具のシェルフにもひろがります。
詩と絵画のコラボは、世界の果てまで連れてって!が有名なフランスの詩人ブレーズ・サンドラール (Blaise Cendrars)との「シベリア横断鉄道とフランスのプティット・ジュアンヌの散文詩 (La Prose du transsibérien et de la petite Jehanne de France)」、ダダイズムの詩人トリスタン・ツァラの「許された果実(Le Fruit permis)」(1956)の挿絵などがあります。
ソニアは1900年にフェラガモのプリント装飾にも及んでいます。ソニアはココ・シャネルと同じ1970年代に亡くなりました。私たちと生きていた時代を共有していたことになりますね。ソニア好きなのですが、著作権が絡みます。この辺で。
さて、ロベールに戻ります。ゾラやマラルメ、シャンフリーやボードレール達が印象派の画家たちと親密だったように、ロベールも交際がありました。
文学的だとシュルレアリストのグループから除名されたフィリップ・スーポー(1990年まで生きていました、凄いわぁ)。そして短い交際でしたがアポリネール(短命)。アポリネールの1918年の作品の「カリグラム」は詩(文字)を絵にしたものですが、これがエッフェル塔ですよね。
ほかに印象派にも深い画家セザンヌに、詩人マラルメに影響を受けます。
ロベールの連作はエッフェル塔、リズムのほかに、「サン・セヴラン教会( Saint Severin) 」、「窓(Window/Le Fruit permis)」があります。これがこのセザンヌとマラルメの影響によるものといわれています。
肖像画にはキュビズムのジャン・メッツァンジェをジャポニズムで描き、作曲家ストラヴィンスキー、ル・ドゥアニエ(アンリ・ルソーのことです)は特徴を活かしています。美術史家ウーデ、ファッションデザイナージャック・エイムのミセスも描いています。ジャック・エイムの夫人ではないかと。
ピカソ、アポリネールらが中心となって、パリの「洗濯船」(バトー・ラヴォワール)で「アンリ・ルソーの夕べ」という会を開いたとありますが、ドローネーは参加したのでしょうか?
ロベールは本当に様々な要素からインスピレーションを受け、「要」の作品を誕生させてるわけですね。セザンヌ主義にかけてドローネー主義とでもいいましょうか。
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